前回のブログの続きです。
千日紅、今回初めて種から育てたのですが、夏の暑さをものともせずみるみるうちに大きくなって、庭を白やピンクで彩ってくれました。
そんな健気に咲いてくれた千日紅を、花壇の入れ替え時期だからといって引っこ抜いてしまうのはあまりにも惜しくて。。。
そこで思いつきました。
せっかく背が高くなっているんだし、切り花にして花束を作ろう!と💐
とりあえず切って束ねてみましたが…
何束出来るん?ってくらい量が多い。。。
あまりにも多かったので、他の人にプレゼントしてみることにしました。
家の門扉の前に水の入ったバケツを置き、「ご自由にどうぞ」と書いた紙を敷いて。
せっかくなので千日紅の他に、パープルファウンテングラスという、イネ科の一年草も一緒に束ねてみると、動きが出てお洒落になりました。
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しばらくしてから見てみると、誰かが1束持って帰ってくれたようでした。
ただ、うちの前はランニングや犬の散歩で通る人が多くて、そういう人たちは走ることや愛犬に集中していて
花束の存在にはなかなか気づかないだろうから…
ずっと家の前に置いておくのも微妙だし、せっかくならご近所さんにあげようかな〜と思っていると、うちの上に住んでいるご近所さんとたまたま目が合いました。
あら、こころさんこんにちは。
良いお天気やね〜。
うちの上(正しくはうちの家の裏に擁壁があり、その上)に住んでいるそのご近所さんは、年齢的にはおばあちゃんで、一軒家で一人暮らしをされています。
そうだ、あのおばあちゃんに花束を持っていこう!と思い立ち、職場でもらったお饅頭と、千日紅の花束をお裾分けしに行きました。
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ピンポンを鳴らし「こころです」と伝えると、「はいは〜い」とすぐに出てきてくれたおばあちゃん。
お饅頭と花束をお裾分けしにきたということを伝えるととても喜んでくれ、なんと「良かったらお茶でもどう?」と、家にお招きして下さいました。
私自身、そのおばあちゃんに対して良い人だな〜という印象を持っていたことと、なんだかお茶をよばれていってもいいなという気がして、お言葉に甘えてお邪魔することにしました。
玄関を入ってすぐの場所に白の秋明菊が花瓶いっぱいに生けてあり、その時点でなんだか素敵な暮らしをされていそうな感じだな、とは思っていましたが…
通された居間には、亡くなったおじいちゃん(おばあちゃんの旦那さん)の写真が飾ってあるインテリア調のお洒落な洋風お仏壇と、座り心地の良いゴブラン織りのソファが置いてありました。
壁面には水彩で描かれた絵や、ご家族のあたたかい写真。
そして隣の部屋には、大きなグランドピアノ。
ダイニングにはこれまたお洒落な洋風の丸い木製テーブルが置いてあり、それに見合った椅子も4脚。
以前から、このおばあちゃんから物腰柔らかいだけでなく、なんとなくお金持ちの方が持つ余裕のような雰囲気を感じるなぁと思っていたのですが、お家を拝見してなるほど、合点がいきました。
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おばあちゃんは私が持ってきた千日紅もすぐに花瓶に生け、ダイニングテーブルの中央に飾ってくださいました。
「どうぞ掛けてね」と案内され腰掛けると、テーブルの隣には大きな掃き出し窓があり、その窓からは擁壁の下に建っているうちの家がよく見えました。
自分の家と庭とその奥に広がる風景を、人の家の窓から俯瞰して見るのはなんだか不思議な感じであり、だけれども木々の輪郭に沈んでいく夕日と照らされた我が家がとても綺麗で、思わず見入ってしまい。。。
「コーヒーで良いですか?」
キッチンの方から、ぐつぐつと沸騰するケトルのお湯の音がしたあと、漂ってくるコーヒーの香ばしい香り。
ゆったりとした動作でコーヒーを淹れてくれるおばあちゃんと、窓から差し込むオレンジ色のあたたかい夕日。
なんだかその空間の居心地が良くて、私は窓からの景色をぼうっと眺めていました。
こころさん、夏にお庭にひまわりを植えてらっしゃったでしょう?
その時ここから眺めて楽しませてもらってね。
お花が好きな方なんだなぁと、嬉しかったんですよ。
特に何も考えず、自分がただ植えたいだけの一心で種から育てたひまわりたちでしたが、なんと、おばあちゃんがそれを見て和んでくれていたとは。。。
なんだかほっこりしました。
掃き出し窓からはおばあちゃんの庭も見え、そこには小さな花壇スペースがあり、背丈の低いコスモスが植わっていました。
実はうちの2階のベランダからそのコスモスたちがよく見えており、洗濯物を干す際に自然に目がいって、可愛いなぁと思っていたのです。
その旨を伝えると、
コスモス、こころさんちから見えるかなぁと思って、ここに植えたんです。
なんと、うちから見える場所を選んで、植えてくれていたみたいです。
それが全く押し付けがましくなく、さりげない感じで…
おばあちゃんの温かい心に触れ、私も自然と笑顔になりました。
おばあちゃんはうちの隣に住んでいる人とちょっとしたトラブルがあり(私は特に何とも思わないけど隣の人にとっては癪に障るらしく。プライベートに関わることなので内容は伏せさせて頂きます)、その件について心を痛ませていたようです。
そんな話を聞いたり、娘さんのこと、亡くなった旦那さんのこと、ピアノのこと、庭や植物のことなど、いろんな話をしました。
そしてなんと、おばあちゃんのお庭に咲いていた白い秋明菊とオステオスペルマムを株分けしてもらったり
他にもおばあちゃんがたまたまご友人からもらったお土産のお菓子をお裾分けしてもらったり、枝豆をもらったりと、こちらがお裾分けしに行ったはずなのにはるかにたくさん頂いてしまいました。
「私が力になれるか分からないけれど、何か困ったことがあったらいつでも頼ってくださいね。」と言ってくれたおばあちゃん。
またいつでも遊びにきてねと、笑顔で見送ってくれました。
いろいろ頂いたことももちろん嬉しかったけれど、おばあちゃんの滲み出る優しさやあたたかさ、気持ちが何よりも嬉しく、お辞儀をしてお宅を後にしました。
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徒歩1分の距離ではあるものの、秋の夕暮れは鶴瓶落とし。
うちに帰ってくると、もうすっかり黄昏時に差し掛かっていました。
取り急ぎ株分けしてもらった植物をポットに仮植えしようと急いで作業していると、なんと、うちのお隣さんがやってきました。
お隣さんのことは先ほどおばあちゃんとの会話の中で話題に上がっていただけに、かなりドキッとしてしまいましたが、手元を見ると見慣れたファイルを持っておられ、たまたまうちへ回覧板を回しにきただけのようです。
内心、心底ほっとしたことはここだけの内緒です(笑)
「こんばんは」「回覧板ありがとうございます」と挨拶を交わして終わりかな〜と思いきや…
お隣さんは開口一番に「こころさんとこのお庭は〇の被害、大丈夫?嫌ぁねぇ、絶対〇〇さんとこのやつよ。」と、愚痴をこぼし始めました。
私はおばあちゃんから聞いて、その問題はおばあちゃんとこのが原因ではないことは知っているのですが、お隣さんの意見はなかなか頑なそうで、私は「へぇ、そうなんですね〜^^;」と流すにとどめておきました。
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するとふと、お隣さんが、私が門扉前に設置していた花束を入れたバケツの存在に気がつきました。
「これ、なぁに?花束?」
「あっはい、花壇の一年草抜いて冬花壇に仕立てていく時期なんですが、まだ綺麗に咲いてるからせっかくなら皆さんにもらって頂けたらいいなと思って、置いてるんです。」
「この、紫色の猫じゃらしみたいなのは何ですか?お洒落ねぇ。」
「それはパープルファウンテングラスといって、イネ科の一年草なんですよ。」
「へぇ〜、紫の噴水の草ってことか。なるほど。。。」
お隣さんはうちの庭に生えているパープルファウンテングラスの、ススキに負けずとも劣らない立派な株を眺めて呟きました。
綺麗ねぇ。。。
これ、せっかくだし1束もらっていっても良いですか?
お花は綺麗だからね。。。
飾らせてもらいますね。
お花を見つめている時のお隣さんの表情はとても柔らかく、優しい雰囲気でした。
この方、おばあちゃんを目の敵にしてはいるけれど、決して悪い人ではなくて。
私たちが引っ越してきてすぐ、極寒の中なのに暖房器具がなくて湯たんぽと厚着でしのごうとしていた時に、その事情を聞いてすぐにご自宅の暖房器具を何個も貸して下さった、優しい方です。
その後も地域のルールなど親身に教えて下さり、おかげで私たちも早く土地に馴染めたのかなと思いますし、本当に感謝しています。
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どちらも良い人なのに、仲良くなってくれれば良いのになぁとは思うものの、きっとそれは簡単ではないこと。
私にできることも多分ほとんどないけれど、何となく今回のことで「花が自然と縁を繋いでくれるのだろうか」とも思ったりしていて
やはり私は良い雰囲気の庭をコツコツ作っていこうと、それが何か誰かの感性が変化するきっかけになるのかもしれないなと、薄闇の中帰っていくお隣さんの背中に思いを馳せたのです。
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